今年の出来はどうだ
今年の等級検査も終わり、収穫量も確定しました。
9月10日に刈り取った酒米は
一旦農協へ出荷して等級検査を受けます。
いわゆる「特定名称」を表示する(大吟醸とか純米酒とか)
お酒を造ったり販売する場合はきちんと検査を受けた酒米を使用し
その証明が無いといけませんというルールがあります。
もちろん
お米を作った立場でも お酒を造る立場でも
どういう品質か・量がどのくらいか
ちゃんと知っておかなければ話になりませんので
検査を受けるのは大事な事です。
今年の収穫量は1980kg
等級は 二等・・・・でした。
量はまあまあ確保できましたが
等級は上から二番目ということで
う~ん、なかなか厳しいですね。
過去13年酒米を作ってきましたが
一等だったのは極僅かで ほとんどが二等。
三等なんて年もありましたっけ。
昔から作っている食用米みたいなわけには行きません。
等級に影響する原因は色々ありますが
酒米も食用米も共通しているのは
粒が不揃いだったり・水分量が不適切だったり
胴割れ米があったり・未熟米が多く混ざっていたり。
特に酒米の場合は なんと言っても
大粒で心白がドーンとあることが要求されますが
今年はちょっと粒の大きさも今ひとつ
心白の出方も充分ではないな と
検査に出されたお米を見て自分でも感じました。
やはり刈り取ったときの籾の状態だけで安心するのは
まだまだ修行が足りませんね。
基準をクリアするのは なかなか ホント難しいです。
例えば、他の農作物
りんごやブドウ、茄子やトマトなどは(あくまで例えですが)
一本の枝につける実を減らす事で
一粒あたり養分がたくさん行き渡るように手を入れる作業があります。
そうすると大粒で味もしっかりしたものが収穫できるわけですが、
酒米の場合も似たようなことが言えるわけで
植えつける苗の量が多いと(一株が大きいと)
養分の取り合いになったり行きわたらなかったり
田圃全体の風通しが悪くなったり等々
仮に収穫量がほぼ同じだとしても
一粒一粒の質には大きく差が出るんですね。
稲の場合は後から間引くのはなかなか難しいので
植え付けと植え直しで調整しなければいけません。
『田植えの時にあんまりゴージャス(?)で青々してるより
ちょぼちょぼでちょっと寂しいなぁ位でちょうど良いんだよ。
その方が栄養もしっかりとれるし
しっかりした強い稲に育って大粒でよい酒米になるから。』
と 教えられたこともありました。
今年はもうちょっと一株当たりの植え付け本数を
減らしても良かったかなと反省しつつ
また来年、良い酒米が出来るよう頑張りましょう。
何でもそうですが
「質と量」を両立させるのは
なかなか難しいもんです。
最初の年はどうだったかというと
量にして1500kg
等級は、当時の五段階評価で四番目(悲)。。。。
減反の指導もあって田圃全体に植え付けられない事や
その年によって減反の面積が若干変わるので
植えた面積に対しての収穫量はまあまあでしたが
等級は決して褒められたもんじゃありません。
知識が無いなりに色々と情報を集め
なおかつ
「同じ米じゃ!なんとかなるわい!」
と やってみたわけですが
当時はまだ
特徴や特性が充分理解出来ていなかったんでしょうねぇぇ。
ただ、何とか収穫にこぎつけたのが嬉しかった事と
何でも最初から上手くいかないさ
という 半分開き直りみたいなところもあって
そんなにショックが大きかった訳でもありません。
当時も今も変わらないのは
「来年はもっと・来年はもっと」ということで
毎年それを繰り返しながら
反省したりトライしてみたり
少しは自分も進化してるのかなぁ・・・・・・です。
等級は良いに越したことはありません。
酒米としての質が良ければ
仕込みの過程や出来上がったお酒も
大きな差が出るものです。
大吟醸クラスやお酒の鑑評会出品用のお酒の多くに
酒米の最高峰と言われる「山田錦」が使われるのもそのためです。
香りも味わいも一味違うのはもちろん
かかる手間もお米の価格も一級品で
当然お酒の価格も一級品ですよね。
じゃあ坂野も「山田錦」育てればいいじゃん?
なんてわけにはいかないんです(笑)
それほど酒造りに適して尚且つ価格も高いのに
量が少ないのは訳があります。
それは 「育てたくても育てられない」 のです。
というのは
生育条件が非常に厳しくて限られているからで
標高・昼夜の寒暖差・日照条件等
栽培に適している土地は全国でも極僅か。
また、他の酒米と比べても更に
背丈が長く大粒で穂がとても重いので倒伏しやすく
育てるのも管理するのも非常に難しいので
仮に土地柄が良くても上手く育つ保証もありません。
とても素人に手が出せるもんじゃありませんねぇ。
過去にも色んなところで
栽培に挑戦したり実験したりと
それでも上手く行かないので
未だに限られた地域でしか栽培されていないのでしょう。
「山田錦」に限らず
他の農作物や畜産、漁業も皆そうですが
やはり希少なものにはそれなりの訳と価値があるんですね。
うちの場合
田圃の広さも限られていますし
酒米作りに土地柄や気候条件等が本当に向いているのか
分からない部分もありますし
単に自分のやり方が悪くて
思うような品質にならないのかもしれません。
いずれにせよ
量の多少や等級の良し悪しは毎年ついてまわります。
その年に出来たお米で仕込むしかありません。
ただ、極端に悪い場合はともかく
ある程度の質のものが出来れば
経験や技術・管理や環境で補うことも出来ます。
そういう意味では
美寿々酒造さんに仕込みをお願いしていますが
お米の出来が良くても悪くても
そのお米で、出きる範囲の最高の手間を掛けてもらっているおかげで
毎年とても良いお酒に仕上げてくれます。
それこそが大事な所で
地元で出きる限り良い酒米を作り
そのお米で出きる限りの旨いお酒を仕込んでもらう
それを皆が飲んで喜んでくれるのが
「地米酒」の一番の目標ですから。
10月に入ると
酒蔵も仕込みの準備で慌しくなります。
早いところはもうじきに仕込みが始まります。
うちの「美山錦」は
これから精米された後美寿々酒造に届けられます。
まだ少し先になりますが
緑香村は12月下旬~1月上旬に仕込みに入る予定です。
ここ数日冷え込みが厳しくなってきました。
秋も盛りですが
すぐそこに冬が迫っているなと感じます。
そうすると真冬の酒蔵の風景が頭に浮かぶわけで
あのキリッとした空気と緊張感が
すぐそこまで来ていると思うと
また一段と・・・・・・楽しみになってきました。