初添(はつぞえ)
仕込みも本番です。
先週末の荒れた天気も落ち着いて
晴れ間ものぞくおかげで
積もった雪も大分溶けてきましたが
朝晩の冷え込みはかなり厳しいです。
仕込みの作業は
あらかじめ用意した酛(酒母)に
麴米と蒸米と水を加え
3回に分けて仕込んでいきます。
米と水の量を徐々に増やしていくことで
全体に満遍なく醗酵が進むという
日本酒ならではの工程なんですね。
初日が『初添』
1日休ませる『踊り』
次が『仲添』
最後に『留添』
まずは初添です。
ここでもまだ大きいタンクには仕込みません。
初添の段階では量が少ないので
小さめのタンクに酛を移して
初添の麴米と蒸米・水を加えていきます。
今年の緑香村の仕込みは
米の総量1,089kgに対し
酛の仕込みに麴米と蒸米合わせて90kgの米
(総量の約8,3%)と
100リットルの水を使いました。
それを10日間ほどかけて充分に醗酵させ
初添の段階では
麴米50kg・蒸米110kg=160kg
(総量の約14,7%)と
160リットルの水を加えて増やしていきます。
この量だと
皆さん想像する酒蔵の大きいタンクだと
底の方にちょこっとしか醪(もろみ)が無い状態になるわけですが
これでは何かと都合が悪いという事です。
撹拌するにはそれほど問題は無くても
適度な温度で満遍なく醗酵させるには
ちょうど良い大きさの器を使わないと
温度管理が難しいのです。
例えば
お風呂の底の方に5センチだけお湯を入れても
混ぜるのは簡単ですが
すぐに冷めてしまいます。
同じ量のお湯を
バケツに入れると
長時間温度が保たれますよね。
冷めてきたらバケツにタオルとか
保温マットを巻いて蓋をしておけば
ある程度温度は保たれます。
まあ例えは悪いかもしれませんが
そんな感じでイメージしてもらえば
なんとなく分かるかと思います。
初添の段階では
急激に量を増やさずに
元気な酛の状態を保ちつつ
醗酵を順調に進めるのが大切なので
管理しやすい大きさのタンクで仕込むというわけです。
一般的には10度~11度の温度を保ちつつ
醗酵を進めるのが醪には良いとされていますので
投入する蒸米の量と温度に気を配りながら
ちょうど良い感じに冷ましたり
蒸米の量を加減したりしながら
作業を行います。
(蒸し上がったばかりのお米って熱々でしょう。
そのまま入れると温度が上がりすぎてしまうんです。)
醪の温度が下がりすぎると
醗酵が止まってしまい酒にならず
高い温度で醗酵が進みすぎると
雑味の多くバランスの悪い酒になってしまうため
酒造りでは 終始
温度管理が一番気を遣うところです。
初添の段階では米の量も少ないので
手作業で蒸米を運び
櫂(撹拌する長い棒)で丁寧に撹拌しながら
醪を造っていきます。
米を運ぶ手
温度を測る手
櫂を入れる手
蔵人は皆さん愛情を持った手で
仕込んでいきます。
初添が終わると
踊りと言って
1日醪を休ませて
しっかり醗酵させつつ落ち着いた状態にします。
ダンスの踊りじゃないですよ(笑)
階段の踊り場、とでも言うか
急激に登るんじゃなくて
小休止・ワンクッション
そんな意味で踊りと言うんでしょうね。
残りの
仲添・留添では
投入する米の量がグッと増えていきます。
仲添で麴米・蒸米合わせて320kg
留添で麴米・蒸米合わせて519kg
収穫したお米の全てが
緑香村に変わってゆくのはもうすぐです。